エジェクタピンとコアピンの豆知識

エジェクタピンとコアピンの豆知識

ダイカスト鋳造のエジェクタピンの交換周期はどれくらい?

ダイカスト鋳造において、製品を金型から押し出す重要な役割を担うエジェクタピン。過酷な環境下で使用されるこのエジェクタピンは、適切な時期に交換しなければ、製品の品質低下や金型の破損、さらには生産ラインの停止といった大きなリスクを招きます。本記事では、材質ごとの交換周期の目安から、寿命を左右する要因、そして劣化のサインを見極めるポイントまで詳しく解説します。

ダイカストにおけるエジェクタピンの役割と重要性

ダイカスト鋳造において、エジェクタピンは成形が完了した製品を金型から離型(脱型)させるための重要部品です。金型内に溶融した金属が高圧で注入され、冷却・凝固した製品を押し出す際、ピンには極めて高い熱負荷と物理的な摩擦力が繰り返し加わります。

エジェクタピンの状態が悪化すると、製品表面に「押しキズ」や「段差」が生じるだけでなく、離型時のバランスが崩れて製品が歪む原因となります。最悪の場合、ピンが折損して金型内に残留し、次サイクルの型締めによって金型本体を物理的に破壊してしまう致命的なトラブルに繋がりかねません。そのため、交換周期を正確に把握し、予防保全を行うことは、生産性を守る上で極めて重要な工程です。

エジェクタピンの交換周期の目安

エジェクタピンの寿命は、鋳造する合金の種類、つまり溶融温度や流動性によって大きく変動します。ここでは一般的な合金別の交換目安をまとめます。

アルミダイカスト:5万〜20万ショット程度

アルミダイカストは、溶融温度が約600℃から700℃と高く、ピンへの熱負荷が非常に大きいのが特徴です。また、アルミ合金は鉄鋼材料(ピンの材質)と親和性が高く、表面で「溶着(かじり)」が発生しやすいため、他の材質に比べて交換周期は短くなる傾向にあります。精密部品や、ピンが製品の意匠面に接する場合は5万ショット程度、一般的な構造部品でも20万ショット以内での定期交換が推奨されます。

エジェクタピンの寿命を左右する要因

交換周期はショット数だけでなく、以下の要因によっても前後します。

  • ピンの表面処理: 窒化処理やDLCコーティングなどが施されている場合、耐摩耗性と離型性が向上し、未処理のものより寿命を延ばすことが可能です。

  • 冷却設計: ピン周りの冷却が不十分だと、熱膨張によってブッシュとの摩擦が増大し、早期の折損やかじりを引き起こします。

  • 潤滑剤の塗布状況: 自動スプレーによる離型剤・潤滑剤の塗布が適切でないと、摺動部の摩耗が加速します。

  • ピンの細さ(径): 当然ながら、細いピンほど物理的な強度に欠け、座屈や折損のリスクが高まるため、交換周期は短めに設定すべきです。

劣化のサインを見極めるポイント

定期的なショット数管理に加え、日常点検で以下のサインが見られた場合は、予定周期前であっても交換が必要です。

  1. 製品のピン跡に「まくれ」や「バリ」が出ている: ピンとブッシュのクリアランスが広がっている証拠です。

  2. ピンの戻り不良が発生する: 熱歪みやバリの噛み込みにより、スムーズな摺動が妨げられています。

  3. 摺動部から異音が発生する: かじりが発生している可能性が高く、放置すると金型の焼き付きを招きます。

まとめ

エジェクタピンの交換周期は、アルミダイカストで5万〜20万程度が目安です。しかし、これらはあくまで標準値であり、製品の形状や要求精度によって最適値は異なります。

まずは自社の過去のトラブル履歴から独自の「管理限界値」を設定し、重大な故障が起きる前に交換する「予防保全」の体制を整えることが、結果としてトータルコストの削減に繋がります。


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