エジェクタピンとコアピンの豆知識

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チタンの細物旋盤加工におけるポイント

チタンはその優れた耐食性や比強度から、医療機器や精密機械の分野で不可欠な素材ですが、加工難易度の高い「難削材」としても知られています。特に径の細い「細物旋盤加工」においては、チタン特有の粘り気や低い熱伝導率に加え、素材の「軽さ」が加工精度を阻害する大きな要因となります。本記事では、チタンの細物旋盤加工で直面する技術的課題とその解決策、特に安定した寸法精度を出すためのコツについて、プロの視点で詳しく解説します。

チタンが「難削材」と呼ばれる理由と細物加工の難しさ

チタン旋盤加工が難しい最大の理由は、その物理的特性にあります。チタンは鉄やステンレスに比べて熱伝導率が極めて低く、切削時に発生した熱が材料へ逃げずに刃先に集中しやすい性質を持っています。これにより工具の摩耗が激しく、連続加工における寸法精度の維持が非常に困難になります。

さらに細物加工特有の悩みとして、材料の「剛性不足」が挙げられます。細い棒材は切削抵抗によって容易にたわんでしまい、刃先から逃げが生じることで狙い通りの寸法が出ません。また、チタンは化学的活性が高いため、工具との「溶着」が起きやすく、これが面粗度の悪化や細いワークの折損を引き起こす直接的な原因となります。難削材であるチタンを、さらに「細い状態」で旋削するには、一般的な金属加工とは一線を画すアプローチが求められます。

「軽さ」がもたらす加工への悪影響

チタンの大きなメリットである「軽さ(低密度)」は、細物旋盤加工の現場においてはデメリットとして作用することがあります。鉄の約60%程度の重量しかないチタンは、加工中に素材が暴れやすく、振動(ビビり)が発生しやすいのです。

特に長尺の細物加工では、高速回転時の遠心力や切削抵抗に対して、素材自体の自重による安定感が期待できません。この「軽さ」と「弾性係数の低さ(しなりやすさ)」が組み合わさることで、微細な振動が連続的に発生し、加工面の波打ち(ビビり目)や微細なクラックの原因となります。材料をいかに「物理的に拘束し、安定させるか」が、チタン細物旋盤加工の成否を分ける極めて重要なポイントといえます。

旋盤加工における課題:浮き上がりと精度不良

細物チタンの旋削において、特に注意すべきがワークの挙動です。加工中の切削圧によって、細いワークがガイドブッシュや支持部から「浮き上がり」や「逃げ」を起こしやすくなります。

特に小径のチタン棒鋼の場合、わずかな切削抵抗の変動だけでも挙動が不安定になります。ワークが一度浮き上がったり逃げたりすると、回転中心が瞬間的にズレるため、真円度の低下や、軸方向に沿った直径寸法のバラつき(テーパ状の摩耗)が顕著に現れます。チタンの「軽さ」ゆえに、重い金属であれば自重で抑え込めるような微細な力でも、ワークを跳ねさせてしまうリスクがあるのです。

安定した精度を出すための旋盤加工対策

細物チタンの浮き上がりや逃げを抑え、高精度を実現するためには、以下の対策が有効です。

まず、ガイドブッシュ方式の自動旋盤の活用です。加工点の直近を常にガイドブッシュで支持することで、チタンの「しなり」を物理的に封じ込めます。この際、チタン特有の溶着を防ぐため、ガイドブッシュの材質選定(セラミック製など)やクリアランスの極限までの調整が不可欠です。

次に、切削力の方向制御です。ワークを下方に押し付けるような力が働くように刃物の当て方(アプローチ角)を工夫したり、必要に応じて背分力を抑えた形状のチップを選定したりすることで、浮き上がりを抑制します。また、クーラント(切削液)の供給方法も重要です。強力な高圧クーラントは冷却には有利ですが、細物に対しては水圧そのものがワークを押し流す要因にもなり得るため、吐出の角度と強さを最適化し、安定性を損なわないバランスを見極める必要があります。

工具選定と切削条件の最適化

チタン細物旋盤加工を安定させるためには、工具と条件の追い込みが欠かせません。

  • シャープな刃先の使用: 切削抵抗を最小限に抑え、ワークへの負担を減らすため、ホーニング(刃先処理)の小さい、極めて鋭利な研ぎ付けインサートを選定します。

  • 低速・高送り・高圧冷却: 熱を刃先に溜めないために、適切な切削速度を維持しつつ、可能であれば高圧クーラントを用いて刃先を直接冷却します。

  • 振動対策: チタンの軽さに起因する振動を抑えるため、防振性能の高いホルダの使用や、オーバーハング(突き出し量)を極限まで短くするセッティングを徹底します。

まとめ

チタンの細物旋盤加工は、材料の「難削性」と「物理的な不安定さ」という二重の困難を抱えています。特に軽さに起因するワークの浮き上がりや逃げへの対策は、マシンの選定から治具、工具の微調整に至るまで、経験に基づいたトータルな管理が不可欠です。

軽くて強いというチタンの特性を最大限に活かした精密部品を作るためには、加工設備とプロセスの最適化が欠かせません。「細すぎて精度が出ない」「ビビり目が止まらない」といった課題をお持ちの場合は、これらのポイントを一つずつ見直してみてください。


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