エジェクタピンとコアピンの豆知識

エジェクタピンとコアピンの豆知識

エジェクタピンのサイズ選びで失敗すると…

ダイカストに使用されるエジェクタピンのサイズ選びを失敗すると、いくつかの深刻な問題が発生します。高温・高圧で溶融金属を扱うダイカストでは、ピンへの負荷が非常に大きく、その選定ミスは金型全体の寿命や生産性に大きな影響を与えます。

金型穴寸法と軸寸法が合わない

ダイカストでは、溶融した金属が金型内に高速・高圧で射出されます。このため、エジェクタピンと金型穴の間にわずかな隙間(クリアランス)があるだけでも、そこに溶けた金属が入り込み、固まってしまいます。

  • クリアランスが大きすぎる: 溶融金属が侵入し、固まって製品に鋳バリが発生します。これにより、製品の品質が損なわれるだけでなく、余分なバリ取り作業が発生し、生産コストが増大します。

>>鋳バリの発生要因とエジェクタピンによる対策

  • クリアランスが小さすぎる: 高温の金属が高速で流れるため、ピンと穴の間に大きな摩擦が発生します。これにより、焼き付きカジリが起こりやすくなります。焼き付きとは、溶融金属が金型表面に融着する現象で、エジェクタピンの動きを阻害し、最終的には金型を破損させる原因にもなります。

>>カジリの発生原因とエジェクタピンによる対策

エジェクタピンの折損

ダイカストではエジェクタピンにかかる離型抵抗が非常に大きいです。したがって、ピンのサイズや材質の選定を誤ると、折損のリスクが高まります。

  • カジリ: クリアランス不足や潤滑不良によってピンが穴に固着しようとすると、突き出し時に無理な力がかかり、ピンの座屈や折損につながります。
  • 熱膨張: ダイカストでは金型とピンが700℃以上の高温に晒されるため、熱膨張が大きくなります。クリアランスが不適切だと、この熱膨張によってピンが金型に圧迫され、折損を引き起こします。
  • 離型抵抗の増大: 金型の冷却が不十分だと、製品が熱い状態で離型されるため、離型抵抗が強くなります。ピンに過大な負荷がかかり、折損の原因となります。

>>エジェクタピンの折損を防ぎ、ダイカスト生産性を向上させる秘訣

規格品によるクリアランスの問題

ダイカスト金型のエジェクタピンは、高温・高圧に耐える特殊な材質(SKD61など)が使われ、高い硬度と靭性が求められます。規格品から安易に選ぶと、ダイカスト特有の厳しい環境に対応できないケースがあります。

例えば、高温下での熱膨張を考慮したクリアランス設定は、規格品では不十分な場合があります。ダイカストでは、金型とピンの両方の熱膨張を計算に入れた上で、最適なクリアランスを設計することが不可欠です。

まとめ

ダイカストにおけるエジェクタピンのサイズ選びは、製品の品質だけでなく、金型の寿命や生産効率に直接影響します。単純な寸法合わせだけでなく、高温・高圧というダイカスト特有の環境を考慮したクリアランス設計、そして適切な材質と強度のピン選定が、安定した生産には不可欠です。


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